木の屋石巻水産

STORY.3

25.December.2015

さばを巡る男の駆け引き

下積みはなんと7年!木の屋の買い付け担当がいい魚を仕入れなければ、缶詰は作れません。その仕事ぶりに密着すべく、石巻魚市場を訪ねました。

競りは浮かない顔で始まった

早朝の魚市場。水揚げされたばかりのさばを前に、真剣な目つきで品定めをしている買い付け人。その中には、木の屋の買い付け担当である平塚さんと日野さんの姿も見えます。

競りが行われている石巻魚市場は、東日本大震災による被災を経て2015年9月にリニューアルされたばかり。建物の長さは880mもあり、床もピカピカ。魚の鮮度を守るための空調も完備されている、最新の魚市場です。

合図とともにさばの入札がスタート。しかし平塚さんと日野さんの手は動かず、少し離れて様子を見守ったままです。
「なんだか魚体が小さいからねぇ。あれじゃうちの缶詰の規格に合わない。」
スーパーで売られている魚を見慣れてしまった目では、それでもずいぶんと大きなさばに見えますが…。
「缶詰で使う魚は、一般的にはこれくらいの大きさが基準だと思うけど、うちで使うのはもっと大きいもの。規格に合わないものは無理して仕入れません。毎日見ていれば、見ただけで大体の重さがわかるようになってきます。小さすぎるのを買っちゃうと、『これどうするんだ』って営業に怒られちゃう。」

仕入れてみないと
分からない、
一か八かの繰り返し

しばらくして別の船で水揚げされたさばが再び魚市場に運び込まれると、2人の表情が変わりました。どうやら、1回目より大きなさばが揚がった模様。
さばの目の色はどうか、身のつき方は?脂の乗り具合は…。そして他の買い付け人がどのように勝負を仕掛けるのか、限られた時間の中で探っていきます。

仕入れたさばから缶詰の規格に合うものを選別すると、半分に満たないことも。魚市場で競りに並んでいる魚は、サンプルとして船に積まれている魚の一部をすくい上げたもの。残りも含めて全体のうちどれくらい使える魚があるかを読むことも、買い付け人の目にかかっています。規格外のものは冷凍して他社に売却。使える魚の割合や売値などの予想を加味した上で、利益を出せる値段で勝負します。
「取材もあるし、勝ちにいくか」と苦笑いしながらの入札。結果、見事さばを競り落としました。

「下積み時期は分からないことだらけで、逆に 怖いもの知らずでした」

「このさばは漁場が近かったから、鮮度は保証済み。だから大きいのがどれくらい入っているかが今回の競りのポイントでした。」

工場長も務める平塚さん。買い付けを始めたのは7年前だそうです。現副社長の元で下積みをし、8年目でデビューしました。買い付けは取引である以上、人間関係も大事な要素。市場の方や周りの買い付け人との関係を築いていきながら、一人前の買い付け人となっていきます。
「新鮮な魚はね、身が固いからこうやって刀みたいに立つんです。時間が経つと、ぐにゃっとしちゃう。鮮度感から言ったら、今日のはギンギンですよ。でも目の前で釣り上げて、泡吹いてるくらいの魚は逆にぐにゃっとしてるの。最初それが分からない頃は鮮度が悪いと思っていました。なかなか見極めが難しいよね。」

いい魚がなかったら
缶詰は作らない。
それが木の屋の
ポリシー

競り落とした魚は船からトラックに移され、3分ほどで木の屋の石巻工場へ。数十トン単位で仕入れたさばが氷を張った甕に移されていく様子は圧巻です。

仕入れてみないと実際どれくらい大きな魚が入っているか分からないとあって、平塚さんは不安げな表情。しかしいざ蓋を開けてみれば、コンベアからはみ出さんばかりの大きなさばもあり無事に缶詰ができそうです。
水揚げされてすぐの魚を加工しているので、魚の生臭い匂いが全くしない石巻工場。仕分けられた魚は、水揚げから数時間で缶詰に加工されていきます。

いい魚が入っていない場合、木の屋では買う魚のグレードを落とすのではなく、工場の稼働を止めることを選びます。
魚を読み、人の腹を読まないと缶詰は作れません。木の屋の缶詰にごろっと収まる大きな魚の切り身は、実はそんな熱い駆け引きを経ていたのです。